−星野:今回の公演では「明日は天気」「驟雨」「秘密の代償」という3つ作品が上演されますが、他の2作品を意識されたりはしますか。
菅生:いや、特に意識はしていないですね。今は自分たちの作品を仕上げることだけを考えています。
塩田:私もそうです。今回は3本作品があるので、通常の作品より稽古が少なくて、1本だけだったら毎日少しずつ積み重ねていくんですが、2日稽古して2日休みだったりするので、稽古時間が変則的なんです。それもあってとにかく集中してしないといけないので、自分たちのことで精一杯です。
−大槻:お芝居はひとつの作品をつくるのにたくさんが関わられますが、価値観も個性もみなさんそれぞれの中で、どんな感じで稽古を進めていかれるのでしょうか。どの程度できたところで「納得」されるのでしょうか。
菅生:「これで納得、お客さんに観てもらえる」と、稽古していて思うことはありませんね。みんな最後まで「もっともっと」と思うので。だからいろんな人が集まって途中で意見もぶつかったりしますが、目指すところは一緒なので、意見の対立や話し合いもそのための時間だと思います。ぶつかったからといって人間関係に溝ができたりということはないです。そういう時のほうが最終的に結束したりしますね。
塩田:いつも稽古時間って足りない足りないって思うんですよね。やればやるほど深くなって、深くなるほど疑問や対立が多くなって・・・本読みをして、でも立ち稽古しないと分からないこともあるし、お客さんが入ってからでないと分からないこともありますし、全部終わってから分かることもあるんです。きりがないです。そして、「再演」っていうことになると、「おもしろくなって当たり前」っていう意識があるから、むしろ一層プレッシャーがかかります。
菅生:杉村春子は東京公演が終わって、地方公演も終わりに近づいたころ、次再演するかも分からないのに、千穐楽の直前まで楽屋に駄目だしに来てましたね。
−三本:お2人の文学座に入られたきっかけを教えていただけますか。
菅生:僕の場合は、信頼できる人にお芝居をやったら、やるなら俳優座とか文学座に入ればと進められて、最初は軽い気持ちで受けたら合格して、それから37、8年ですが、だんだんはまっていってますね(笑)。
塩田:私は福岡の出身で、最初は役者になりたいって両親に言ったら反対されました。「じゃあどこだったら安心か」って聞くと地方公演がある劇団、って言ったんですが、いくつかしかなくて・・知ってるところといえば、杉村春子がいる文学座だったんですね。他にも受けていくつか合格したんですが、文学座を選びました。
−星野:今回のお2人の役どころについて教えてください。
菅生:題名が「秘密の代償」といって、僕ら2人は夫婦なんですが、僕は塩田が演じる奥さんにいつも怒られてばかりの夫です。かわいい女中さんに騙されて、うぬぼれと下心で息子と張り合って・・結局息子と両方彼女のわなにかかってしまいます。岸田國士の作品って言葉でうまく説明しづらいんですが、 ま、最後は「代償」をしっかりいただくという展開です(笑)。
−星野:稽古を見学させてもらいましたが、じっと聞いていないと中身が分からないくらい濃厚ですよね。
塩田:本当に、岸田國士の作品はすごく濃厚です。今回の3本は、「明日は天気」が30代の夫婦、「驟雨」が40代の夫婦、そして私たちが出演する「秘密の代償」が50代の夫婦とそれぞれの世代の夫婦のお話なんですが、「秘密の代償」だけちょっとミステリアスな展開で進んで、最後の最後でこのタイトルの「秘密の代償」という意味が分かるようになっています。
−星野:最後に八尾のみなさんにメッセージをいただけますか。
菅生:今、3本の作品はそれぞれ必死で稽古をしております。ぜひ楽しみに待っていてください。
塩田:もしかしたらみなさんにおなじみの作品ではないかもしれませんが、必ずみなさまに喜んでいただける作品になると思っています。短い作品が3本ですのでぜひお気軽にご覧ください。
この日はお稽古開始前に菅生さん、塩田さんに早く来ていただいてこのインタビューが実現しました!この後の立ち稽古では、タンスの引き出しを開けるタイミングなど細かいところまで熱心に意見を出し合いながら作品づくりが進められていました。さて、お二人はどんな夫婦を演じられるのか、どんな「代償」をいただくのでしょうか。どうぞお楽しみに。
プロフィール
菅生隆之(すごうたかゆき):
千葉県出身。1979年より文学座座員。
『シラノ・ド・ベルジュラック』『わが町』(以上文学座)、『リチャードV世』(さいたま芸術劇場) 、『王女メディア』(メジャーリーグ)等文学座内外の舞台をはじめ、テレビ、ラジオドラマ、ナレーション、テレビの洋画吹き替え(ジャン・レノ、トミー・リー・ジョーンズ、アル・パチーノ等を担当)など様々な分野で活躍中。
今回の作品では、「秘密の代償」で高級官吏の夫生田是則を演じる。
塩田朋子(しおたともこ):
福岡県出身。1989年より文学座座員。
『わが町』『くにこ』(以上、文学座)、『かもめ』(新国立劇場) 『円生と志ん生』(こまつ座)等、文学座内外の舞台に多数出演。また、テレビの洋画の吹き替え(ケイト・ブランシェット・メリル・ストリープ等)などでも活躍している。今回の作品では、「秘密の代償」で菅生隆之演じる高級官吏の妻、生田数子を演じる。